第11話 〜砂漠〜




           「見えた!あれがサンマイル大陸なんだね!」

           それから3日後。ようやく目的の地が見え、ラナが叫ぶ。

           ニルス達ともお別れか、とは思ったが、今は新しい地への好奇心の方が強かった。

           港らしい港は見当たらないので、着けれる所に着いた。




           「木がないねえー」

           「チーチルチー(すなすなー)」

           「ススースー(あついでしゅ)」


           海賊船から降りたセレナ達が周りを見渡しながら、そう言う。

           他の者も、船から降りると、周りを見渡した。

           「姉ちゃん達ー!!」

           その時、船からニルスが大きな声で呼んだ。皆が見上げると、ニルスが手を振り、

           その隣にはグリートがいた。

           「ニルス!!グリートさん!!ありがとうー!!」

           「こっちこそ、ありがとー!!また会おうねー!!ばいばーい!!」

           「ばいばーい!!」

           皆で手を振りながら、船がまた大海原へと出航していく姿を、ただ見ていた。









           「ねぇ、じーちゃん。姉ちゃん達は、この世界を助けてくれるんだよね?」

           いつになくおだやかな海の上、ニルスは祖父に問う。

           少し、複雑な顔で。

           「・・・今、この世界には異変がおき始めておる。

            魔物は更に凶暴となって人を襲い、天候も、海も、大地も、

            荒れはじめておる。このままでは、すべてが枯渇してしまうじゃろう」

           「・・・・・・?」

           祖父の返答の真意がつかめず、首をかしげるニルス。祖父は続ける。

           「そんな世界を、救うというのじゃ。並大抵の決意ではない。

            ・・・・・・信じるのも勇気。そう、教えたじゃろう?」

           「うん。そうだね!」

           祖父に対し、ニルスは力強く頷いた。そのまま続ける。

           「あとね、じーちゃん。ボク、強くなる!姉ちゃん達みたいに、皆を守れるように!」

           「・・・そうか。頑張るのじゃぞ」

           「うん!!」

           2人は笑いあった。












           「黄色チョコボ!」

           一方、大陸ではセレナが黄色チョコボを5匹召喚していた。

           「あの時半漁人に突っ込んでったコだね!」

           「こうしてみると、可愛いですね」

           ラナとハープがまじまじと見つめる。

           「・・・まさかコレに乗んのか?」

           「そうみたいだね。こっちの方が早く着けるだろうし」

           どうやら鳥に乗るのが嫌らしいリラン。シルフが諦めろ、と付け加えた。

           幸い、2人の会話は説明中のセレナには届いていなかった。

           「砂漠を歩くのはしんどいしー。サハラ王国まで長いしー。それに、

            チョコボはもともとこーゆーとこの馬代わりなの」

           その説明が終った頃、


           「あ、コレ着てね」

           ラナが思い出したようにそう言って、何かを取り出した。

           「ローブですか。そんなに日焼けがすごいのですか?」

           少し訝しげにローブを眺めるハープ。セレナがすかさず割り込んできた。

           「ヤケドしたみたいになるんだよーねー」

           「チルー(ひりひりー)」

           「ススー(ピリピリー)」

           そんなわけで、ラナは皆にローブを渡した。

           それからチョコボに乗り、出発。思いのほか揺れず、その足は速かった。



           「思ったよりマシだなぁ」

           「マシって何!?マシマロちゃん返してもらってもいいんだよ!?リラン兄!」

           思わずボソッと呟いたリランに、セレナがおおいに反応する。

           「あ、その子の名前ですか?セレナちゃん」 

           こんなところで喧嘩でもされたらたまらないので、すかさずハープが話をそらす。

           「そだよ!この子はチョコで、ラナのはレモン。ハープさんのがシュガーで、

            シルフさんのがクッキー。ちなみにみーんな♀」

           その判断が功を奏したらしく、セレナは途端に嬉々として皆に紹介した。

           まあ、皆のほうはどれがどれだかわかってはいなかったが。







           「右側に巨大蠍がいるね」

           不意に、シルフがそういった。皆はあからさまに嫌そうな表情をして、右を向いた。

           そして、絶句した。


           「・・・・・・でかっ!?」

           「限度ってもんがあるでしょー!?」

           ラナとセレナが叫ぶ。確かに蠍は全長40mを優に越していた。尾の針だけでも5mはあるだろう。

           刺されれば即死。毒が回る、とかそんなことも関係なく死ぬ事間違いない。

    
           「馬上じゃなくて、鳥上での戦いかよ。無理なことこの上ねぇな」

           頭をかきながら、リランがぼやく。

           「いいからさっさと戦う!アクアシューター!!」


           ”ズザザザ・・・ッ”


           ラナが放った水球は、当たらずに砂へと落ちた。蠍が地面へと姿を消したからだ。

           「あれはポラズコーピオン!この砂漠の主らしーよ!どーすんのさ!?」

           セレナが叫ぶ。地の利は向こうにあるし、おまけにこちらはチョコボに乗っていて身動きが取りにくい。

           向こうはこちらの動きくらい読み取れるだろう。まさに最悪な戦闘条件だろう。


           「セレナ、リヴァイアサン召喚すればいいんじゃないの?」

           「なに言ってんのラナ!こんなとこで呼んじゃだめだよ!ここら辺一帯がなくなっちゃうかも・・・」

           「そ、そうなの!?」

           使い辛いものだな、と頭の中でラナはぼやいた。その間にも、敵の尾針が襲ってくるので、かわす。


           「地中を伝う術で仕掛ければいいんじゃないのか?」

           シルフはそう言って、流牙蓮を地中へと放った。もちろん敵の動きを予測して。

           「あー、なるほど!――偉大なる星の神よ大地を揺るがし降臨せよ!グランドダッシャー!!」

           それを聞いて、ラナは地系精霊術最大呪文を発動。大地が音を立てて揺らぐ。

           シルフが先ほど放った矢は当の昔に当たっていたが、よほど硬い甲羅をしていたのだろう、

           カキン、とはじかれる音が微かに聞こえただけだった。


           「あ、あの!大丈夫なんですか!?酷く揺れていますが!」

           「あっぶなーい!あぶないよぉー!」

           「チルー!!(わー!!)」

           ハープが不安げにそう言うが、セレナとミルの大声によってかき消された。

           術は地下で発動させたらしく、時々その力に耐えかねた地表に亀裂が生じる。

           酷い地震に耐えながら、皆はポラズコーピオンを探した。


           「おい!あれ!!」

           リランが声を上げた。既に砂は波のように流れ、下手をすると足を取られる。

           指差す方には、大きな亀裂があり、そこから探していたものが顔をだす。

           地面に飲み込まれていた。

           「グェグェェァァァ・・・!!!」

           奇声を上げ、のた打ち回るが、術はまだ止まっていないので、どんどん地面へと飲まれていく。

           なんだか、アリ地獄のようで哀れだ。

          
           「とどめ、刺してあげた方がマシっぽいね」

           「へいへい。んじゃ、真空破斬(しんくうはざん)!!」

           砂よりはふんばりのきくチョコボの背に立ち、すばやく横薙ぎに剣を払った。空を切っただけだと思われたが、

           斬撃はまっすぐ光のように飛んで、目標を捕らえた。


           ”ズバッ”


           肉を絶つ独特の音と共に、ポラズコーピオンは亀裂に飲み込まれた。







           それからも一、二度敵に遭遇はしたものの、すでに主を倒しているので、さほどの事でもなかった。

           ニルスから聞いたところでは、砂の王国サハラは一晩もあれば着くらしい。できる限り走り続けた。

           「もう夜だし、休憩しようよー。チョコボたちも疲れてきたしー」


           辺りが薄暗くなり、昼とは打って変わって寒くなってきたことを肌で感じ取れた頃、セレナが声を上げた。

           確かに、ほぼ一日中走りづめでつかれきった体に、この寒さはきついだろう。

           皆はセレナの提案に同意し、キャンプをした。



           「サハラ王国に守人がいるとしても、どうやって見つけるの?情報もほとんど持ってないわけだし」

           皆で火を囲んでいるとき、ラナがそういった。チョコボたちは既にいない。また明日呼ぶらしい。

           「このカルカラ砂漠を越えたとこにあるサハラにはね、王家に代々伝わる赤い宝石があんの。

            もしかしたら、それが契約石かもしれないよー」

           ま、勘だけどね、とセレナは付け足した。

           「・・・どこから、その情報を?」

           小首を傾げながら、そう尋ねるハープ。皆も知りたいところらしく、うんうんと頷く。

           するとセレナはぷぅっと頬を膨らませた。

           「もぉ、セレナは召喚師なんだよ?わすれてなーい?偵察用召喚獣をサハラに送っといたの!

            だから、サハラまでの比較的安全そうな道を通ってこれたんだしぃー」

           「主に会えるような道をか?」

           「もー!!リラン兄はいじわるなんだからー!!」







           夜も明けた次の日。一行はまた走り出した。

           「あ!!見えた!!町だよ、町!!」

           ラナがそう叫んだのは、昼ごろ。それが、サハラ王国だった。


           
           「水飲みてぇー」

           「宿屋に行ってていいー?」

           この暑さに参ったのか、リランとセレナがそう言う。ラナは呆れた、という顔をする。

           「もう、2人共情けないなあ。いいよ、あたしらだけで調べるから」

           そう言って、先に行ってしまった。

           「じゃあ、行ってきますね」

           慌ててハープはそれに着いていく。

           「荷物も運んどいてくれるかい?ついでといっちゃなんだが」
 
           シルフは荷物を渡し、2人の後を追った。

           「オッケー。いくぞーセレナー」

           「りょーかーい」

           

           砂漠の町はどこの世界でも変わらないようだった。皆きつい日差しから身を守る為にローブやベールを被っている。

           それぞれで情報収集をしていた3人は、町の広場で落ち合った。
 
           「なんか収穫あった?」

           「一応はね。明日、王家の宝を受け継ぐ儀式があるらしいんだ。」

           「セレナちゃんが言っていた、赤い宝石のことでしょうね」


           今、町ではその話題で持ちきりらしく、皆明日の儀式のための準備に追われているらしい。

           「皇女だっけ?その儀式を受けるの」

           「そうらしいですよ、ラナ。そういえば、儀式は一般公開はしないのがしきたりだそうです」

           「特別な者しか儀式の場にははいれないんじゃ、どうしようもないな。

            その宝石が契約石かどうか確かめられそうも無い」

           シルフがため息をつく。しかし、ここで考えていても意味が無い。3人は宿屋へと戻った。





           そして、次の日。町はお祭り騒ぎだった。

           「なーんにもしらないのに、バカ騒ぎしてるよー」

           セレナがその様子を見て、笑いながらそういった。大きな声で言わなかったものの、

           誰かに聞かれるとまずいので、全員でその口をふさぐことにした。


           「これが城か?行ってみよーぜー。だめもとで」
           
           リランが立ち止まって、前方の建物を指差す。アラビア風の大きな城。ラナは千一夜物語を思い出していた。

           「よーし!あたってくだけろー!!」

           「チルチルチー!!(はいですー!!)」

           「スススー!!(おー!!)」

           「えええぇぇ!!??」


           冗談のつもりでリランは言ったのだが、セレナ達には通じず、走っていってしまった。

           当然、皆は声をそろえて驚くわけで。



           「待て!ここから先は何人(なんびと)たりとも通すわけに行かぬ!!」
 
           セレナ達の前には、門番が立ちはだかる。皆は遠くから見ていることしか出来ない。

           「王様いないんでしょ?王様いないこと国民には言ってないみたいだけど、今日の儀式どうすんの?」

           「なっ!?」

           にやりと笑って、セレナは門番に向かってそう言った。途端に顔色を変える門番。

           もう一押し、といわんばかりにセレナは続けた。

           「セレナ達ならなんとかしてあげれるよ?儀式は夜からでしょ?それまでに王様連れ帰ってくるよー?」


           門番はそれを聞くや否や城内に走って行った。

           「セレナちゃん?一体何を・・・?」

           遠くにいたせいで話が聞こえなかったため、ハープがおずおずと尋ねる。

           「ちょおっと、ねぇ〜」

           それをはぐらかすように、明後日のほうを見ながらセレナは笑った。それを見て、ラナはため息混じりに言った。

           「セレナの情報網は、馬鹿にできないねぇ」

           「えへへ〜」





           セレナのおかけで皇女との謁見を許された一行は、城内へと入っていった。

           豪華な真っ赤な絨毯のしかれた長い廊下をひたすら進み、そのまま大きな謁見の間へと通された。

           絨毯の先にある玉座の上には、ちょこんと少女が座っていた。おそらく、まだ10歳にも満たないだろう。


           「ガキじゃねえか」

           「静かにする」

           思わずそう言ったリランに、シルフが小声で注意した。皆は立てひざをつき、頭を下げた。



           「―なんじら、おもてをあげよ」

           そこへ、格式ばった言葉遣いにいささか苦戦しているような少女の声が降る。皆は頭を上げた。

           「わがなは、プリム=クロッツァ=サハラ。この国の皇女である。わが父上について話があるらしいな。

            かまわん。もうしてみよ」

           いかにも尊大な口調だが、まだ幼いゆえに舌ったらずである。それでもやはり皇女。皆答えようにも、

           口の利き方が分からない。いや、緊張して話せないと言った方がいいだろう。


           「サハラ国王は、先日より王族しか入る事の許されないフィア祭壇を守りしピラミッドへ向かわれたまま、

            帰らないとの事。我らが王を見つけ出して見せましょう。祭壇へ行く許可を頂きたい」


           「セレナ、契約石が無いのに祭壇に行くってどういうこと?」

           発言を終えたセレナに、ラナが耳打ちをした。

           一方の皇女は目を見開いて、返答に詰まっているようだった。


           「なぜなんじらがそれを知っているのかはとわないでおこう。しかし、父上を連れ戻してきてくれるというのは

            本当ならばありがたい」

           一呼吸おいて、皇女はそう言った。父の身の上を案じる娘の表情が、痛かった。


           「して、そなたらの望みはなんじゃ?なにごともなくもうしでているわけではなかろう?」

           さすが皇女だ、と皆は思った。話が分かる。

           「はい。我々は、火の精霊バハムート様にお会いしたいのです」

           セレナは皇女相手に物怖じもせず、淡々と話す。言葉遣いも破談からは考えられぬほど丁寧だ。

           「バハムート様におあいしたい?もしや、おぬしらのうちのだれかは、契約者か?」
  
           驚きをあらわにする皇女。周りの者もざわめく。

           「はい。今、世界の危機を救う為には、精霊様方のお力が必要なのです」


           世界の危機というのは、一般の人々にはまだ実感しえないことだが、こういった者達はそれを感じているものだ。

           周りからやはり、と言う声が聞こえる。皇女も真剣な面持ちだ。そして、皇女は立ち上がってこう言った。


           「われらが代々守りし契約石を使うときがきたようだ」

           セレナの睨んだとおり、王家が石の守人だった。



           その後、皇女自らが祭壇まで案内すると言った。止めようとする者はいなかった。いや、皇女がそうさせなかった。

           これも我ら王家の勤めだと言い放ち、謁見は終った。








           「あー苦しかった。オレ、あーいうかたっくるしいとこはだめだ!」

           「あたしもー」

           大きく伸びをしながら、せいせいしたように言うリランとラナ。
           
           皇女が来るまで待つようにと言われた部屋で、皆はしばし休憩を取っていた。


           「それにしても、すごかったですねセレナちゃん」

           「へっへー!すごいっしょ!」

           ハープはセレナにいたく感動しているようだった。

           「・・・王家に伝わる宝が契約石で、王家の人間が守人だということは分かった。

            だが、なぜ王は突然祭壇へ向かったんだろうね」

           シルフが、今までの事を整理するように皆に言った。確かに、不自然だ。なぜ王は祭壇へ行く必要があるのだろうか。


           
           「皇女の準備が整いました」

           ノックの後、兵の声が聞こえた。そして、ガチャっという扉の開閉音と共に、兵と皇女が入ってきた。

           兵は一礼して去っていった。


           「では、フィア祭壇へと続くピラミッドへご案内します」


           皇女は、にっこりと笑って言った。






            *あとがき*

              りこ:なんかぐちゃみそですいません!!原作のほうが大分駄文でして・・・(汗)

                 なんとか話をつなげようとしたら、ちっとばかし長く・・・。

                 はい、ダメだしはBBSまたはメールで!!まってるにょ!!