第12話 〜冥王〜




           出発したのは昼前。チョコボに乗り、プリムの指示通りに走る一行。

           そして、リミットは月が南中する頃。儀式に間に合うように、チョコボのスピードを速める。




           「あれです。あれがピラミッドです」

           プリムが指差す方に、それがあった。やたらと大きい。

           ピラミッドって、王家の墓じゃなかったっけ、とラナは思ったがあえて口にはしなかった。

           それは、微妙な丸みを帯びており、ラナの知るそれと若干形が違っていた。

           「でけぇな」

           「・・・何か変な感じがするねえ〜」

           ピラミッドを見上げながらリランが感嘆の声を漏らす。セレナは少し嫌そうな顔で呟いた。

           皆がピラミッドに圧倒されている間にプリムは衛兵と話をつけ、一行を中へ入れた。





           「また、薄暗くて涼しいところだね」

           シルフが、水の祭壇へ続く祠を思い出しながらそう言った。

           「この中は我ら王族でも精霊様を称える豊穣祭のときくらいしか入りません。
            
            衛兵の話によると、最近ここにも魔物が出るというのです。」

           松明を掲げつつ先頭に立って案内をするプリムがそう言った。

           「こんな危険な場所に王様は何の為に来たのでしょう?

            ますます謎が深まってしまいましたね。」

           ハープが小首を傾げてそう言った。

           「何の為かは分かりません。でも、お父様が正気でなかった事は確かです。」

           プリムは少しうなだれたようにそう返した。

           「んー。もしかしたら人を操るタイプの魔物の仕業かもねー。

            とりあえず、さっさと行ったほうがよさげだね!」

           セレナがいつもの調子で明るく言った。彼女なりの気遣いなのだろう。

           そんなセレナに、皆はぷっと吹き出してしまった。




           一行はどんどん奥へと進んでいった。

           しかし、突然プリムの足がとまってしまった。

           「どうしたの?・・・って、ミイラー!?」

           ひょこっと、前に進み出たラナが叫んだ。目の前に大量のミイラがいたのだ。

           「マミーじゃん!プリム、危ないから下がってて!」

           ラナに続いてセレナが前に出てそう言う。皆も戦闘体勢をとった。

           しかし、マミーの攻撃の方が一瞬早かった。


           「皆さん下がって!――聖なる壁よ!バリアー!!」

           とっさにハープがバリアーで防ぐ。鋭利な刃のような包帯が、音をたてて折れた。

           「こんな建物の中だ!大技は使うな!牙蓮閃!!」

           「わーってるっつーの!!真空破斬!!」

           「プレス!!フリーズランサー!!」

           シルフの一言に皆が続く。セレナは固まってしまったプリムを後方へ押しやった。



           「ギィヒャヒャヒャヒャ!!!」

           「こいつらゾンビかよ!?」

           「だからミイラだ。死体に変わりないぞ。」

           倒しても倒しても、数は減らない。どうやら、効かないようだ。

           「おかしすぎるわ!なんで効かないのよ!?」

           前線の3人は疲れの色を見え隠れさせる。

           それを見て、とっさにハープが前にでた。

           「光を恐れる魂よ無の空間に帰せ!バニッシュ!!」

           光がその場を包んだかと思うと、マミー達は跡形もなく消えていた。

          
           「・・・なるほどね。そういうこと・・・。」
 
           「もう、さっさといこうぜー」

           ラナが呟き、リランがぼやいた。シルフは苦笑いを浮かべた。








           「この扉の向こうに、フィア祭壇があります。」

           それからまた歩き続けた一行に、プリムが言う。

           いかにも大層な装飾が施された金製の巨大な扉は、圧倒的存在感を放っていた。

           「チ、チルチル・・・(うわ、いやみぃー)」

           「スースススースー・・・(いかにもって感じでしゅ)」

           「うるせーぞ、小動物。さっさと行くぞ。」

           セレナ以外には2匹が何を言っているかは分からないが、

           うるさい事に変わりはないと言わんばかりにリランが言いつつ、扉を開けた。

           だが、流石に金の扉は重いらしくなかなか開かない。

           途中からシルフも手伝って、ようやく開いた。




           一行の目に真っ先に飛び込んできたのは、炎の揺らめき。

           そして―――


      
           「お父様!?フレアメイジ様!?」

           「え!?なんで戦闘中!?つか、プリムのお父さん目が据わってる!!」

           男が2人戦っている光景だった。プリムが叫び、ラナも続くが、

           2人にはまるで聞こえていないようだった。

          
           「・・・こ、この禍々しい気配は一体何なんでしょう?」

           「セ、セレナ、こんな怖い感じ知らないよ!?」

           ハープとセレナがそう言う。2人共怯えているようだ。セレナに至っては膝が震えている。

           「・・・よく分からないが、何とかしないといけないな。」 

           「一体どーするってんだよ!?」

           シルフは何とか冷静さを保ち、思考を巡らす。

           リランの方は少しオーバーヒート気味だ。

    
           「プリム、とにかくここでじっとしてて!ハープさん、お願い!」

           考えてても始まらないといった顔でラナが口を開く。

           「え?あ、はいっ!聖なる壁よ、バリアー!!」

           急に指名されたハープは一瞬まごつくが、すぐさまプリムに術をかける。

           「ミルとスーブはプリムを守るんだよ!」

           それを見て、セレナは2匹を護衛役に命ずる。


           「じゃ、行くぜ!」

           「まずは2人の戦闘を止める!」

           そしてリランとシルフは先に行った。








           「―くそっ!一体この禍々しい気配は何なんだ!?」

           緋色のマントをはためかせ、一纏めにした緑の神を揺らしながら青年は叫ぶ。

           目の前の男―サハラ王は威容な気配を放っている。

           「守護者よ・・・バハムートを、呼べ・・・!」

           呪文のように王はそう言い続ける。

           「お前は誰だ!!王を開放しろ!!」





           「雷牙!!」

           突如矢がサハラ王の直ぐ横をかすめた。かと思うと、雷を落とした。

           「ぐぅ・・・っ!?」

           身体が痺れたらしい王はその場でのたうつ。

           「な、なんだ!?」

           急な事で青年は驚く。そこへ、リランとシルフが駆け寄った。

           「なんとかなったみてーだな、シルフ。」

           「ああ。・・・大丈夫か?」

           「あ、はい。あなた方は?」

           シルフの問いに答え、青年は2人にそう問い返す

           「あー、契約者連れてきてやったんだよ。」

           「え!?」

           リランの一言にさっきよりも更に驚く青年。そこに、他3人も来た。


           「フレアメイジってのはあなた?あたしは一応契約者のラナ。」
           
           「あなたが契約者・・・。俺はアンフィといいます。」

           ラナに聞かれ、一礼してからアンフィは名乗った。

           その時、アンフィが酷い傷を負っている事にハープは気付いた。

           「酷い傷です。癒しの精霊よ――キュア!!」

           ちょうどハープが傷を癒した時だった。のたうっていた王が急に立ち上がった。

           皆はバっと身構えた。


           「フフフ・・・フフフフフ・・・・・フハハハハハ!!!」

           王は高らかに笑い出した。しかしその声は、おぞましいものだった。

           「そうか、お前達か!!我が大いなる野望を達成する為の石杖を

            ことごとく折っていった愚かな者共は!!」

           王は続けてそういった。

           「なんなのよ、アンタ!!王様操ってんじゃないわよ!」

           ラナがそれを聞いて叫び返す。

           「うるさいぞ、下等な人間風情が!!我は冥王ギガドール!

            貴様ら如き我が復習の糧でしかないというのに、我に歯向かいおって!!」


           「冥王・・・ギガドール・・・!!?」


           見下すように言い放った一言に、皆は凍りついた。

           今目の前にいるのが、敵。倒すべき相手。

           今ここに居る全員が感じ取っている負のオーラ。

           それは、冥王と名乗るに相応しい力のほんの断片が漏れ出しているに過ぎない。

           一体どれほどの力を持っているというのだろうか。



           「お前達には、ここで死んでもらおう」

           そう言って腕を振り上げる。それに素早く反応したハープがバリアーを張る。

           見えない斬撃がはじけるのが見えた。


           「フレアブラスト!!」

           そこへ、アンフィが炎の矢を放った。一瞬冥王に隙が生じた。

           「衝破熱風斬!!」

           リランが追い討ちをかける。しかし、熱風に吹き飛ばされても、平気な顔をしている。

           「すべてを潤す恵みの雨世極寒の地獄と化せ!ブリザード!!」


           ”ビュオオオオオオオッ”


           「ラナ、そんな大技を使ってはいけない!あの身体はサハラ王なんだぞ!?」

           吹き荒れる吹雪の中で、シルフは叫ぶ。しかし、ラナには届かないようだ。

           その証拠に、周りはどんどん氷の海と化していく。


           「そんなもの、効かぬわ!!」

           そう言って手を払った。

           「ぐわぁぁっ!!」

           「きゃあああああっ!!」

           冥王は吹雪を軽くあしらうばかりか、全員を吹き飛ばしてしまった。


           「ぐ・・・。どうすんだよ!?」

           「あーん!!いーたーいー!!」

           「どうすれば・・・!?」 

           「あーもー、ありきたりで光が効くとか言わないわよね!?」

           打つ手はないと言わんばかりにわめく4人。

           しかし、ラナの一言にハープが反応した。

           「・・・天を駆ける光よ神の裁きを!レイ!!」


           ”ズババババババッ”


           「ぐ・・・っ!?ぬぅあぁっ!!」


           その場に幾本もの光の矢が降り注いだ。

           そして、気がついたころには・・・。

           「あ、王様!!」

           冥王の気配は既に無く、逃げたのだろうと皆は思った。










           「お父様!!」

           「・・・ぷ・・りむ?わ、私は・・・?」

           「大丈夫です。少し、夢をみていただけですから・・・!」

           泣きそうな顔を必死に笑顔にして、プリムは父にそういった。

           皆に気付いた王は、一礼して言った。

           「よく覚えてはいませんが、皆さんが助けてくださったんですね。ありがとう。」

           王様に礼を言われ、皆は少し戸惑ってしまった。

           

           「これを。契約石です。」

           プリムは髪留めの真っ赤な宝石をはずし、ラナに渡した。

           ラナはアンフィの方を見た。契約には力を示さねばならないからだ。

           「・・・もはや勝負の必要はない。お前達の力、とくと見させてもらった。」
 
           アンフィはそう言って、祭壇の方へ来るようラナに促した。  

      
           「バハムート様。フレアメイジ、アンフィの名において誓います。

            お姿をお現し下さい!」


           皆が見守る中、アンフィは壇上に向かって宣言した。

           その言葉に反応して、壇上が光る。

           現れた精霊は、鬣も、尾も炎でできた馬のような姿をした竜だった。

           「予想外に敵は早く動いてきた。

            汝らには一刻も早く最後の精霊レモラと契約を結んでもらわねばならぬ。

            心してもらいたい。」

           バハムートは現れるなり、そう言った。どうやら時間はあまりないらしい。

           「わかってるわ。あいつを早く倒さなきゃいけないもの。

            復讐だかなんだかしらないけど・・・

            そんな事くらいで世界を滅ぼされてたまるもんですか!」

           ラナは真剣な顔をして、そう返した。それを聞いて、バハムートは頷いた。

           「うむ。たのんだぞ、契約者よ・・・。」




           こうして、また新たな力を得た。






            *あとがき*

              りこ:なんかめちゃ長くなったきがします・・・。

                 読んでくれた人せんきゅう!

                 物語はいよいよ佳境へ!?次回待っててね!

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