第5話 〜召喚師〜



             今から2000年前―――聖女と呼ばれる少女がいたの。

             でもね、セレナにとっては、とっても優しいお姉ちゃんでしかなかったの。

             でも、世界はお姉ちゃんを聖女とか、今ではレイルだっけ。そうとしか見ないの。

             一番イヤなのは、皆お姉ちゃんの事何にも知らないのに、

             ただ『天使様』としか見ない事。

             皆は昔の事を知らないからなんだけど、やっぱりイヤなの。

             ルミお姉ちゃんがルミお姉ちゃんじゃなくなってるから。



             お姉ちゃんが魔王の手からこの世界、リンガロを救ってくれた時、

             孤児院にいたセレナは、召喚師の家系として名高いファミリオン家の養女になった。

             セレナには、それだけ強い魔力があったんだって。パパ(養父)が、そう言ったの。

             たしか、7歳だったっけ―――。














              「チルチルチー(誰かきたよー)」

              「スーススー(侵入者発見ー)」

              「えー?にんげーん?それともどーぶつー?」

              「チルチルー(人間が4人)」

              「スススース?(セレナしゃん、見に行く?)」

              「うん、いくー。いこっ!ミル、スーウ゛」

              「チル!(ハイ!)」

              「スー!(ラジャッ!)」


              今、セレナはミルとスーウ゛と一緒にエックスプレートの頂上より少し下にある山小屋に住んでるの。

              なんでかって?だってセレナはノーム様の近くに居なきゃいけないんだもの。

              ファミリオン家に代々伝わる、この『契約石』を守らなきゃいけないんだもの。

              それが、ファミリオン家の者として認められた、『石の守人』としてのセレナのお仕事。

              だから、この山に来る者は皆、『契約者(コンダクター)』以外は皆、排除してきたの。



              「さあってと!その人達はどれかなあ〜?久しぶりの来訪者だもんねっ!」

              「チルチルチー(相変わらずですー)」

              「スースー(楽しそうでしゅ)」


              少し見晴らしのいい所まで来て、来訪者を待ち構える事にした。ハッキリ言って、ワクワクする。

              尻尾が玉になってる水色の鼠、ミルと耳と尻尾が紫色の兎っぽいけど、羽狐のスーウ゛は、

              思いっきり呆れた顔をしてるけど、気にしない。
















              「おい、急げよー?もう昼なんだぜー?」

              金髪の剣士のお兄ちゃんが振り返ってそう言った。

              一緒に先を歩いている水色の髪のお兄ちゃんも振り返った。

              「俺達が少し早いんじゃないのか?」

              その後方には、お姉ちゃんが2人歩いてた。

              「も〜!!!待ってってば!!ハープさん、しっかり!!」

              「あ、はい・・・。すみません、こんなに歩いたの、初めてなんです・・・。」

              「いいって、いいって!あの2人が元気なだけだって!」




              ・・・・・・黒髪だ。ルミお姉ちゃんと同じ、黒髪だ。

              ちょっと、違うけど、黒髪だ。

              でも、この世界の人じゃない。きっと。

              目が離せなかった。




              「チルチ?(セレナ?)」

              「スーススー?(大丈夫でしゅか?)」

              「えっ?うん。大丈夫、だいじょーぶだよ!」

              よっぽどすごい顔してたんだろうな・・・。2匹がすごく心配そうな顔で見てた。

              ごまかして、笑った。その時だった。急にふっと暗くなったのは。



              ・・・後ろに、何かいる。



              そう感じた次の瞬間、宙に浮いていた。

              「ふえっ!?」

              「チルチルチー!!(うしろに魔物ー!!)」

              「そりゃ分かるよ!いいから助けてよ〜!!」

              なんかぶにゅぶにゅした物がまとわり付いてて気持ち悪い!

              身動きが取れないから、ミルとスーウ゛に助けを求めたんだけど・・・・・・。

              「スー。スススー(無理でしゅ。スーウ゛達もー)」

              「チルチー(捕まっちゃったー)」

              「マジですか!?」

              あーもう、万事休すじゃん!頭の中は、混乱(パニック)状態。

              「チルチルチー!(マンドスライムだー!)」

              ミルには見えたらしく、そう教えてくれた。

              「マンドスライム!?どっからわいてきたのさ!?気配も何もなかったじゃん!!」


              「ヅヂノナガ・・・。ゲバイギエル、ヅヂノナガ・・・。」


              そしたら、マンドスライムが口を利いたから、びっくり。

              てゆーか、土の中?確かに、気配は消えるし、近づきやすいもんね。

              やばいなあ。油断した・・・・・・。


              「ゲイヤグゼギ・・・ワダゼ・・・ゲイヤグゼギ・・・」


              やっぱり、それが狙いかー。当たり前だよね。契約石は、結構な力を持ってるしね。

              契約の意思がなくったって、使い道はいろいろあるもんね。


              「イ・ヤ!!に決まってんでしょ!?離してよっ!このツチドロニョロリン!!!!」

              「チ、チルチル!?(ネーミングセンス微妙!?)」

              「スーススー!?(しかも突拍子もない!?)」


              「ギザマァ・・・ゴロズゾ・・・!ゴロズ・・・!!」


              あっちゃ〜怒らしちゃった!どーしよー!?何にも考えてなかった〜!!

              誰か助けてー!!!望み薄だけどー!!!




              「流牙蓮!!」

              「火龍剣!!」

              「ほえ!?」



              ”ズドドドッ、ドッカーンッ”



              何かが立て続けにぶち当たる音と、爆発音。

              セレナ達は少し吹っ飛ばされて、転がった。とりあえず、助かった〜。

              「ふえ〜。ミル、スーウ゛、大丈夫〜?」

              「チルチー(だいじょぶー)」

              「スススー(怪我もなしでしゅ)」


              無事を確かめ合ってた時、助けてくれたのだろう人が来た。

              ・・・・・・あ!!

              あの4人組じゃん!さっきの4人組じゃん!


              「お前、大丈夫か?」

              金髪のお兄ちゃんがそう言った。

              「怪我はないね。それにしても、どうしたんだい?」

              水色の髪のお兄ちゃんがそれに続いた。



              「ちょっと2人とも!?何派手にやってんのさ!?危ないじゃん!!」

              「でも、大丈夫そうですね」

              後から、黒髪のお姉ちゃんと、オレンジの髪のお姉ちゃんがやってきた。

              なんか、すんごく呆れてる。ま、確かに派手だったモンね。

              「てめぇにだけは言われたくねえな、演出派手女」

              「ぶっとばされたいの!?リラン」

              「お、落ち着いてください、ラナ!」


              ・・・なーんか、みてたらあきないかも。


              「助けてくれてありがと!セレナピンチだったの。お姉ちゃん達は?」

              セレナそっちのけで会話されたら困るもん。セレナの方から、喋んなきゃね。

              「ああ、そだね。あたしは、ラナ」

              「オレはリラン」

              「俺はシルフだよ。」

              「私はハープといいます」



              うーん。この人達は悪い人・・・じゃあないよね?うん、きっとそうだよね。勘だけど。



              「で?この土色の魔物はなんだ?気味わりぃ」
 
              リラン兄がツチドロニョロリンの事を聞いてきた。

              「ツチド・・・じゃなかった。マンドスライム。変形自在で、土の中からここまで来たみたいなの」

              「チルチルチー(大変だったよー)」
  
              「スススー(気持ち悪かったでしゅ)」

              「・・・この生き物達は?魔物じゃなさそうだが・・・」

              「かわいらしいですね。何を言っているのか分かりませんが・・・」
 
              今度はシルフさんとハープさんがミルとスーウ゛について聞いてきた。
 
              「ネズミっぽいのはミル、兎っぽいのがスーウ゛。ちなみに、ミルは♂で、スーウ゛は♀」 



              なんか、久しぶりだなぁ。こんなにお話するのって。50年ぶりかなぁ?



              「ところで、お姉ちゃん達は、何しに此処へ来たの?」

              いっけなーい。本題忘れてた!ってな訳で、今聞いとこー。
 
              そう思って、傍に居たラナに聞いた。

              「え?あ、そうだった。あたし達ね、ノームって精霊に会いに来たの。力を貸してもらおうと思って」




              え?・・・ノーム様の力を借りる?・・・・・・・冗談じゃない!!

              この人達も、石を狙ってるんじゃん!!セレナの勘外れてるじゃん!

              悪い人じゃん!!!!





              「どうしたの?セレナ?」

              「・・・・・・同じ・・・・・・!」

              「へ?」

              「同じ!!あんた達も、さっきのマンドスライムも!!石が目的なんだ!!」



              この石は絶対守らなきゃ!!契約者が来る日まで、守らなきゃ!!



              でも、そんな日は来ないほうがいいんだよね。だって、それって世界が危ないってことだもん。

              その世界を救うために、契約者はここにくるんだもん。それまで石を守り通すのがセレナの役目。

              パパがそう言ってた。だから、今日までずっと、守ってきたの。1人で。




              「な、なんだよコイツ!!」

              「どうなっているんだ!?」

              「落ち着いて下さい、セレナちゃん!」

              皆が必死に何か言ってるけど、聞きたくない。



              「セ、セレナ!違う!あたし達は違うの!助けたいだけなの!」


              「・・・・・・お、なじ、こえ・・・・・・!?」








              いつだったっけ。その声を聞いたのは。



              ――あたし達は、助けたいだけなの!お願い、分かって!!――



              夢だったけど、とってもリアルに覚えてた。セレナに訴える、声。

              ラナの声、おんなじ。

              これは、偶然なのかな?でも、

              攻撃、しちゃいけない。

              そう思った。直感的に。だから、杖を、降ろした。


              「チルチル?(やっつけないの?)」

              「スススースー?(どうしたでしゅ?)」



              ミルとスーウ゛が不思議そうにに聞いてきた。でも、理由は教えなかった。

              他の皆は、とってもほっとした顔をしてた。

              「セレナ、石って何のこと?あたし達の目的は石じゃないわ。

              ただ、この世界のためにも、精霊達の力が必要なの。精霊たちも、危ないしね」

              「ほえ?」


              ・・・もしかして、セレナ、とんでもない勘違いしてたの?

              世界のためって、世界が危ないって事じゃん!

              じゃあ、もしかして、この中に、契約者がいるの!?


              ・・・・・・・うわ〜・・・。セレナ、すんごく失礼な事したよぉ〜!!


              「今度はなんなんだよ?コイツ」

              「リランはだまってて。セレナは、きっと何か知ってるのよ」

              リラン兄とラナがこそこそ言ってるけど、そんなことよりちゃんとお話聞かなくちゃ!

              「セレナのおうちに来て。そこでお話するから」











             強引に皆をおうちに連れてった。そして、聞いたの。

             冥王が、精霊様達の力を利用して、世界をどうにかしようとしてる事。

             ラナ達は、それを阻止して、冥王を倒すために、精霊様の力を借りようとしてる事。

             それは、冥王よりも、早くなければいけない事。


             セレナも、いろんな事を教えた。精霊様の力を借りるには、彼らと契約する必要がある事。

             そしてそれは、契約者にしかできなくて、契約の際には、契約石がいるって事。

             セレナが、その石を守ってきたこと。


             ・・・それから、夢に出てきた『声』の事。


             「セレナの事だったんだ。ラミアさんがいってたのは」

             「じゃあ、コイツも『鍵』ってワケか」

             ラナとリラン兄だけが納得してる。シルフさんとハープさんは知らないんだ・・・。ま、いいけどさ。

             「・・・セレナにも、関係あるって事だよね?」

             「そうだと思うけど・・・。あたしも良くわかんないのよ」

             ラナに聞いてみたけど、そう言って笑うだけ。もう、よくわかんないじゃん!!

             とにかく、鍵ってことは、セレナも一緒に行くべきだろうってことだけ分かった。


             でも、どーしよう?世界が危ないんなら、どーにかしたほうがいいよね?

             だって、この世界は、お姉ちゃんが守ってくれた世界だもん。壊されたくないよ。

             セレナだって、守りたい。じゃあ、やっぱりついてった方がいいよね?

             冥王ってのをやっつけちゃうって言ってるんだしさ。でも・・・・・・・・。



             「・・・ねえ、ノーム様のとこ行くんでしょ?セレナが連れてったげる」

             「急に話がかわったね・・・」

             「そだね、シルフさん。でも、知ってるんならお願いするわ」

             今は、まずノーム様のとこに行くべきだよね。さっきも魔物がいたし、無事かどうか不安だし。

             でも、やっぱり急に言いすぎたみたい。皆一瞬、え?って顔になったモン。


             「オッケー!あ、さっきは・・・えーっと、さっきはごめんなさい」

             誤るの、忘れてた。だから、誤っといた。さっきの事。

             でも、皆キョトンとした顔になった。あれ?なんで?

             「あぁ〜!さっきのね。べつにいいわよ。ずっと1人で守ってきたんでしょ?

              だったら、疑われたってしょーがないし。あたし達も良く分かってなかったし」

             分かったー、という顔をしたラナが、そう返してくれた。皆も、頷いてる。

             「・・・・・・うん!」



             ちょっと、嬉しくなった。






             「チルチルチー(うれしそうだね)」

             「スースススー(そりゃそーでしゅ)」

             「チルチル、チルチルチー?(今度は、受け入れてくれるかな?)」

             「ススースースー(だといいでしゅね)」



             ミルとスーウ゛が、小声でそう話してた。

             でも、そうなんだよね・・・。セレナのこと、ちゃんと受け入れてくれるかな?

             セレナは、皆と違う。もし、分かったら、皆はどういう反応を示すだろう?

             それに、また、あの時みたいなことになったら・・・どうしよう?

             お兄ちゃんの時みたいになったら・・・・・・・どうしよう?






           *あとがき*

            りこ:うーん。原作からはなれそうだにょ・・・。ま、いっか。

               これまではね、1話1話キャラ視点で書いてたんだにょー。
 
               一話はラナ。2話はリラン。3話はシルフ。4話はハープ。そして、最後はセレナ。

               わかってたかにょー?わかんなかったら、今わかったからいいでしょにょ?(おい)

             斎:わかるようにしてやれよ。

            ゆん:こいつになに言っても無駄だって。

            りこ:ひどっ!!

             斎:そーだね。

            りこ:ひどっ!!もーいいにょー!!




            戻る