第8話 〜真偽〜




           「クエクエー!!(おりゃー!!)」

           「クル〜!!(とりゃー!!)」


           「チルチル!?(なにごと!?)」

           「ススー!!(ひえー!!)」


           突如現れた赤い変な鳥と樽(たる)に入った犬のような生物の声にびびるミルとスーウ゛。

           他のもの達はそれを見て、緊張の糸が切れたみたいにガクッとなる。


           「んもうっ!このシリアス(?)な展開だってことわかってんの!?」

           そして、びびった二匹にセレナが一喝する。


           「ケケ!!クリン!!勝手に出てきちゃだめだろ!!」

           はっとしたようにニルスが二匹に向かって怒る。

           「クエクェクエ〜(だってぼく達〜)」

           「クルクルクル〜(暇で仕方なかったんだもの〜)」

           しかし、二匹に反省の色はない。



           「時と場所を考えて行動して下さいね?」

           ニッコリ笑ってそう言うハープが怒っていることは、一目瞭然だった。




           「・・・あ、あの、話を戻してもいいですか?」

           呆気にとられていたアンジェがそう尋ねる。

           「いいんじゃねぇの?」

           その問いに、リランがどうでもよさげに答えた。

           「あーっもう!よく分かんない展開じゃないの!」

           まったくもーっという感じで、頭を抱えるラナ。とにかく、説明がほしいところだ。


           そのうちにアンジェは、みなの前に立った。そして言った。

           「お姉ちゃん、どうして?いってくれたじゃない。止めてくれるって!

            その海賊の子を、止めてくれるって!」

           今にも泣きそうな顔で、彼女はラナにそう言った。ラナはそれを聞いて慌てる。

           「ご、ごめん!まさかこの子とはおもわなくって!」



           「あー―ーーーーーーーーーーーーー!!!!」


           その時、セレナが急に声をあげた。皆はその声の大きさに驚く。

           「なんなんだ?一体」

           シルフがそう言って、セレナを促す。


           「だってだってだって!!それ、そのペンダント!契約石なんだもん!!」






           「・・・・・・え!!?」





           一瞬、皆はぽかんとして、とてつもなく間抜け面をしてしまった。

           「セレナには分かるもん!そのアンジェって子がしてるペンダントと、

            セレナがもってる契約石と、おんなじ波動がでてるんだもん!契約石特有の!」


           「・・・・・・・・!」

           セレナの言葉に、アンジェはかすかに反応を示した。それをみて、ラナは彼女に問う。

           「本当なの?アンジェ。それが、契約石なの?

            もしそうなら、それを渡してほしいの。精霊と契約するために必要だから・・・」

           「・・・・・・・・・・」

           しかし、アンジェはなにも言わない。



           「一体何の話をしてるの?ボク、わかんないよ」

           「クエクエー(いやまったく)」

           「クルクルー(次元が違うんだね)」

           一方話についていけないニルス達は、頭に?をとばしている。


           「この世界は、冥王という者に狙われています。その巨大な闇の力に対抗するために、

            この世界を守る精霊様達のお力をお借りしなくてはいけないのです。

            そして、彼女のもつ石こそ、その力をお借りするために必要不可欠な物なのです」

           それを見たハープが、ニルス達にそう説明する。

           「・・・要するに、あの石は、ただの石じゃないんだね。ボク達の世界を守るために、

            あの石はあるんだね。姉ちゃん達が、守ってくれるんだね。

            う〜ん・・・じゃあ、ボク、あの石諦めるよ」

           ニルスはわからないながらもなんとか理解した様だ。

           「にしても、どーするつもりだ?ラナの奴。説得できんのか?」

           リランがぼやく。他の3人も、少し不安だった。



           「・・・・・・お姉ちゃんが、契約者・・・なの?」

           アンジェはやっと口を開いた。

           「そうよ。もうノームとも契約をしたの。だから、お願い!その石を渡してくれる?」


           それを聞いて、ようやくラナが契約者だと認めたアンジェは、分かったと言って、

           ペンダントを外した。そして、ラナに手渡そうとしたが・・・。



           「グゲアァァ!!」



           「魔物(モンスター)!!」

           「もー!!お決まりパターンじゃないんだから!!」

           「しかも、また水属性ですね」

           「じゃあ、またミルのでばん!?」

           「チルチー!(やりまっか!)」

           船を泊めていた所の近くから、魔物が現れた。それにシルフがいち早くきずき、

           ラナ、ハープ、セレナが立て続きにそう言った。


           「お姉ちゃん!」

           突然の魔物の来襲に驚いたアンジェだったが、
           
           すぐにラナに石を渡す。ラナは、それをしっかりと握り締めた。



           「ミル!スーウ゛!」

           「ケケ!クリン!」

           「四体攻撃(フォースアタック)!!」

           セレナとニルスの声が重なる。命令を受けた4匹は、一斉に飛び掛っていった。


           「チルチルチー!!(れーきゃくー!!)」

           「スーススー!!(スターダスト!!)」

           まずミルが敵を凍らせる。次にスーブが氷や水などの混じったガスのような

           星系魔法で攻撃する。

           「クエクェー!!(火炎放射!!)」

           「クルクルー!!(サンダーボルト!!)」

           そして、動けない敵に追い討ちをかけるように、ケケの炎とクリンの雷が直撃。

           魔物は倒れた。炎と氷と電撃が、まだあたりにあった。


           「えらいよー!ミル、スーウ゛!」

           「よくやったね!ケケ、クリン!」

           2人は4匹を褒める。他の4人は、敵の様子を伺っていた。

           「これで終わったら、すっげー弱ぇことになんぞ、コイツ」

           「あたし達の出番なし?」

           そして、4人は敵が本当にやられたのを確認した。



           「あ、アンジェ。シーズ祭壇への道は分かる?」

           ラナは急に振り返って、そういった。

           さっきのことに驚いたのか、少し腰が引き美味だったアンジェは、

           パッと体制を整えてから、質問に答えた。

           「うん。でも、海の中にある祭壇へいける唯一の道は、通れる時間が決まってるの」

           「道って・・・海の中だろ!?どーやっていくんだよ?」

           「そんなもの行ってみれば分かる事だろう」

           リランが驚きと不安とその他もろもろが入り混じったような発言をする。

           しかしそれをシルフはたった一言で片付けた。

           一方、セレナは目を輝かせながら空想の世界に入っていた。

         
           「海がパカって開くの!?それともザシュッって割れるの!?あ〜早くみた〜いっ!!」

           「チルチルチ?(海水はどーなんの?)」

           「スススー?(どっかいくんじゃ?)」

           「クェクェー?(TUNAMI発生?)」  

           「クル?(なにそれ?)」  


           「おい、なんか別世界に旅立ってるぞ?」

           「楽しそうでいいんじゃないですか?」 

           リランはそんなセレナと動物達をみて呆れ、ハープはいつも通り受け流す。 



           「あ、あのさ」

           そんな皆のやり取りをよそに、ニルスがアンジェに話しかける。

           「ボク、その石が世界にとっ大事な物だったなんて知らなかった。

            知らなかったとはいえ、今まで・・・・・・ゴメン」

           「もう、いいの。今となっては、もう・・・」

           






           その後、その場所から出た。

           「ねーちゃん、海を渡る時はボクに言ってね。じーちゃんに頼んどくから。じゃね!」 

           「うん。バイバイ、ニルス!」

           ニルスと別れ、一行はアンジェの案内にそって歩いていった。



           「ここだよ」

           アンジェがそう言い、皆は足をとめる。しかし、見たところ普通の海岸だった。

           「あれー?町の人が言ってた場所じゃないやー」

           セレナがそう言う。確かに、皆が町人に言われて行った所ではなく、

           町からかけ離れたような場所だった。

           「それは、一番よく祭壇が見える場所ってだけよ。」

           アンジェがさらりと答える。だが、口調とは裏腹にその顔色はなんとなく悪い。

           「ま、いっか。守人さんの案内は絶対あってるんだしねー」

           セレナはそれに気づかないフリをして、話を終わらせた。


           実を言うと、皆アンジェの異変には気づいていた。

           契約石を渡してからというもの、少しずつ生気が薄れていくような、

           そんな感じに。しかし、セレナ同様、皆もその事には触れなかった。

           アンジェが必死に気づかれないように振舞っていたからだろう。



           
           「・・・時間です。道が開きます」    

           「みぃち〜♪どぉうひらぁくぅ〜♪」

           「セレナ、はしゃぎすぎだよ・・・」

           アンジェの一言に、好奇心の塊のように、セレナがはしゃぐ。

           そんなストッパーのきかない彼女に少し疲れたように、宥めるシルフ。


           そんな中、前方の海が大口を開け始めた。

           すさまじい波の音とともにその穴を押し広げていく。そうしてやがて、

           人が3人は並んで歩けるほどの広さを持つ道になった。



           「うっわぁ〜〜〜!!!すっごーいいっ!!!」

           目を皿にしてその様子を見ていたセレナは感嘆の声を上げる。

           「すっごーい・・・」

           本当にこの世界はなんでもアリなんだなあと思いながら、ラナは声を漏らす。

           「さ、早く。30分ほどでこの道は消えるの」

     

           「えぇっ!?」


     
           驚く暇もなく、アンジェに急かされながら、皆は慌てて進んでいった。

           その先には、小さな島が現れていた。その上には、

           小さいながらも立派な神殿のような建物が建っていた。




           「やっぱゲームっぽーい・・・」

           島に着くなりそう呟くラナ。道は意外と長く、少しいきが上がっていた。


           ”ザザザザァァーーー・・・・・・”

    
           大きな波の音に驚いて、後ろを振り返る。すると、道は既に消え去っていた。

           一瞬、皆の脳裏には帰りはどうするんだろうという疑問が上がったが、

           その時にどうにかすればいいか、とすぐに考えを変えた。

    
           「この中に、リヴァイアサン様がいるの。」

           更に顔が青くなっているアンジェが、そう説明する。

           「変な奴がいなかったら、セレナ達は普通にメイジと戦って、

            契約するに相応しいかどうか決めてもらうんだー」

           セレナがそれに続いて言う。

           「じゃ、この前のは特別だったってワケね」

           「そだよーラナ」  



           「・・・わたしの役目はここまでだよ、お姉ちゃん」

           不意に、アンジェがそう呟いた。

           「うん。ありがとうね、アンジェ」

           ラナはそう言ってお礼を言う。だが、アンジェは首を振った。

           「違うの。・・・・・・わたしね、もうすぐ消えるの。だから、役目は終わりなの」 

           
           「・・・・・・!!」

           皆は声にこそ出さなかったが、正直驚いた。異変には気づいていたが、

           まさかこんな事とは、と思ったのだ。


           「もしかして、石の力で・・・」

           ハープがそう聞く。アンジェは頷いた。

           「うん。今まで命を引き伸ばしていたの」

           「もしかして、君の代で守人が途絶えてしまったのか?」

           冷静にシルフはそういった。それにも、アンジェは頷く。その身体は光を帯び始めていた。


           「アンジェ!死ぬなんて嘘でしょ!?」

           「違うよ、お姉ちゃん。もう、死んでるの。魂だけがこの世にあったの。

            ・・・・・・アンジェには、世話になったわ。」



           アンジェのその一言に、皆は言葉を無くした。


           どういう意味?そう聞く前に、彼女は続けた。

           「わたしは、アンジェの身体を借りていたの。この世に留まる為に。

            だから、次に目を覚ましたときには元のアンジェに戻ってるわ。

            さようなら、お姉ちゃん。さようなら、アンジェ。

            ・・・わたしの・・・たい・・せつな・・・・・・」

           「アンジェ!!」

           そのままドサリと倒れたアンジェを、ラナが受け止めた。気を失っているだけだった。




           それから、彼女を近くの木の下に寝かせた。

           用心のため、ハープがバリアーを掛けた。


           「さ、早く行こう。この中から何か嫌な気配を感じるんだ」

           「わかったわ」

           シルフの言葉に、皆は急いで建物―――シーズ祭壇へと向かった。








           その様子を、遠くから見ている者がいた。


           ――よっかた。あの人達なら、この世界を守ってくれる。この世界を委ねられる。

              ・・・・・・さようなら、私の大切な・・・友達・・・――




           誰にとも言わずそう言うと、ゆっくりと天へ昇っていった。






              **あとがき**

            りこ:はい、後半だいぶはしょってます。・・・って、しらにゃいからいいよね?

               さあさあ、今度は水の精霊へーん!!!!!!

               がんばるからまっててにょ♪


              

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