第2話 〜夢の声〜




その夜、夢を見た。

少女の声に呼ばれる夢を。

そして、答えると同時に起きた。

「またあの夢か……。」

オレはこの夢を何日見ただろう。数えるのさえ面倒だ。







「いらっしゃい!いらっしゃい!!」

「見てってくれいいものあるよ!」

何時来てもアイルの城下町は活気がある。此処に来たのは久しぶりだ。

それにしても、ラミアは何故急に来いと言ったのだろう。





「何時見ても客がいねぇってのはなぁ…。」

客のなさにあきれながらも、何時も言われてるとおりに裏から入ろうとした。

「ありゃ?なんか中が騒々しい…?」


その時だった。例の少女が飛び出してきたのは。



”バタンッ”



でっかい音と共に出てきた少女を一瞬見て驚いた。

泣いていたからだ。しかし、

「イデエッ!!!!!」


気を取られたせいか、突然だったせいか、

恥ずかしいことに扉と壁に挟まれてしまった。


「…!?あっ!!!ごっごめんなさいっ!!!!!」



少女のこの一言だけを微かに聞きながら、オレは闇に落ちた。










―おねがい!助けて!!目を開けて!!おねがい!!!―





まただ。暗闇からまた、あの声が聞こえる。

おまえは誰だ?何故オレに助けろと言う?

声にならない言葉だけが頭の中に響いていた。




「大丈夫…だよね?ラミアさん。」

「ええ…。あ、そういえばまだ名前をきいてなかったわね。」

「あ、あたしは…。あ!よかった!目が覚めたんだ!」

「?…お前、一体…?」

「ごめんなさい。あたしのせいで…。」

「あ、ああ。別にいいけど。」



声を聞いて気付いた。こいつが夢の中で呼んでいた声の主だと。

別にそうだと断言できるわけでもないが、同じ声だから、たぶんそうだろう。

そう思って、起き上がった。すると、ラミアがオレに向かって言った。


「リラン。あなたを呼んだのはね、その娘のことでよ。その娘、レイルなの。」

「えっ!?こいつがぁ!?」

「あのお…。なんであたし、この人の言葉もわかるの?教えてほしいんだけど…。」

そのレイルが横から口を挿んだ。順に説明してくれと、オレはラミアに頼んだ。

「あなたがリランの言葉が分かるのは、あなたに魔法をかけたから。

 この家に入った時に。分かった?」

「なるほど〜。分かった。」

謎が解けたらしく、そう言うと、レイルはだまった。

「で?こいつがレイルって、どういうことだよ?ラミア。」

ベッドの上に座りなおしながら本題に戻そうと思ってそう言うと、

レイルはムッとした顔になった。

「さっきからこいつとかレイルとか言って!
 
 あたしには、石月ラナっていう名前があるんだからね!」

「はいはい。オレは、リラン=インペクスト。」

「じゃあ、リランって呼ぶね。」

即効で呼び捨てかよ。しかも、さっきまでの面がウソみたいにもう笑ってやがる。

もうどうとでも呼びゃあいいさあ。

急に怒ったり笑ったり…。やりにくい奴だ。


「話を進めていいかしら?」

ニッコリ笑ってそう言うラミアの顔が一番こわかった。

一応オレは本題に戻そうとしたんだがなあ…。


「あのね、リラン。単刀直入に言うとね、ラナを連れて行ってほしいのよ。

 この娘はアイルにいると危ないから。旅人のあなたに頼みたいの。」

「なんでオレが!?関係ゼロじゃねーか!!」


つーか、オレに押し付けるつもりだ!絶対!!

「ラミアさん!あたし、無関係な人まで巻き込みたくないよ!」

短い黒髪―といっても、赤茶や黄色が混じった不思議な髪だが―

のラナがラミアにそう言った。しかし、


「無関係じゃないのよ。あなた達2人は。」

ラミアはあっけらかんとした顔で、そう言った。


「え!?なんで?」

ラナが心底驚いて言った。

「ちゃんと説明しろよ。理由次第じゃ、おいとまさせてもらうぞ。」


ばかばかしい。どうせ適当に理由をつけてるだけだ。だが、

確かにこいつの声を夢の中で聞いたから、まったくの無関係、

ではないかもしれない。しかしそれは単なる偶然であり、

関係がある証拠にはならない。一体、何がしたいんだ?ラミアは。

「よく聞いて。私の占いと予知夢は百発百中だってことは知ってるでしょう?」

「ああ。」

なんで急にそんな話になるんだ?まさかまた変なもんでも見たのか?

つーか、オレはそれに巻き込まれてるってことか!?

「すごーい!!で、それがなんなの?」

ラナが歓声をあげる。しかし、何を言わんとしているかは分からないようだ。

ま、普通はそうだよなぁ。

「まず、あなた達は互いに呼び合う夢をみたはずよ。その後、

 ラナはここリンガロに来た。だから、私はリランをここに呼んだの。」

それを聞いて、ラナはハッとした顔になった。

「あ、あたし、確かに呼ばれた。あなたと同じ声だった。」

「オレも。何日も前から。」

じゃあ、そのためにここに呼ばれたのか。つーかそれよりも、

何でオレがラナを連れて行かなきゃいけねえのかってことを教えてほしい。

そんなこともおかまいなしで、ラミアは続ける。


「―世界が混沌と化し、暗闇へと変わる時。世界を救う鍵となるは、『声』聞きし者達。

 その者達を集わせよ―。・・・これが、私が見た夢。まさに今の状況と一致するの。」

「どーいう意味か、よく分かりません・・・。」

ラナが呟く。オレもそうだと思った。

「最近、魔物が出るのは知ってるでしょ?リラン。そのせいで、世界は混沌と化し、

 どこもかしこも、すがる思いで生きてる。」

ラミアは、予知した言葉の意味をひとつずつ、俺達に教えていく。

オレとラナはそれをただ静かに聞いていた。


「そして、その魔物達の根源が闇。冥王ギガドールのこと。」


「冥王ギガドール?」


オレは思わず聞き返した。聞いたこともない名前だ。

「・・・・ゲームみたい。」

ラナがぼそっと呟く。げーむってなんだ?まあ、いい。

「知らないのも無理ないわ。占いで分かったことなのだから。

 でも、遅かれ早かれ世界中に広まるでしょうね。だって、冥王は、この世界を司る

 4大元素精霊様―火・水・風・土―の力を手に入れようとしているのだから。」


「・・・・それを止めろってか。世界を救う鍵となる『声』聞きし者達、だから?」

思わず、そう聞いた。だいぶでかい話だな、こりゃ。

「ええ。そうなるわ。だから、リランに頼んでいるの。ラナを連れて行ってほしいって。」

ラミアは真剣な顔で、もう一度頼んできた。



世界を救う、ねぇ。めちゃくちゃすげえ話だよなあ。

でも、オレはこういうことをしてみたくて、一人前になんかしてみたくて、

故郷をとびだしたんだよなあ。そんなことを考えていたオレに、ラナが言った。


「あたし、この世界をもっと見てみたい。自分にしか出来ないことってのもあるみたいだし。

 それに、どうせ帰れないんなら、この世界で出来ることはやっときたいの。

 今、出来ることを。だから、お願い。連れてって。足手まといにはなんないからさ!」


その顔を見て、必死だ、と思った。本当は良く飲み込めていないんだろうな、

この状況を。そして、『帰れない』と、そう分かっているけれど、

何かせずにはいられないんだろうな。だから、決めたんだろうな。



しゃーねぇなぁ。


「連れてってやるよ。世界がどーたらっつーのもおもろそうだし。」

「ありがとう。」

ラナはそう言って笑った。ラミアは、少しすまなさそうに笑った。












それから、ラミアはラナに着替えをさせた。そりゃ、あの変な服は目立つもんな。

ラナは学校の制服だといっていたが、オレが見たことある制服とは大分違っていた。

「今すぐ出発するの?」

準備ができたラナがそう聞いてきた。んなこと言われたって、すぐ出る以外ねえだろ。

そういうことで、オレ達はラミアの家をでた。




「ありがとうございました、ラミアさん。」

「いいえ。それより、これを。」

そう言って、ラナに、ナイフだとかその他旅の必需品を渡した。

「じゃあな、ラミア。」

「ええ。あ、リラン。4大元素精霊様の所に、もう一人。『声』を聞いた人がいるわ。」

「ああ。つーか、どうすりゃいいんだよ?精霊を守りゃいいのか?

 それとも冥王を倒しゃいいのか?」

よく分かってなかったんだなあ、オレも。そう思って聞く。

「どちらも、でしょうね。精霊様のお力添え無くしては、冥王には敵わないでしょう。

 だから、まずは精霊様のもとへ行くべきよ。そうすれば、後は精霊様が導いてくれるわ。」

「そうか。」

「分かった!」

ラナも、ちゃんと聞いていたらしい。










こうして、オレ達は旅立った。





「で、まずはどこに行くの?」

「さぁな。足にでも聞けよ。」

「茶化さないでよねー!!」






**あとがき**

ゆん:更新遅すぎ…。

りこ:みゃーこれからもっと頑張るにょ!だから見捨てないでっ!!

斎:や、誰も見捨てるなんて言ってないけどね。

ゆん:皆で頑張ろう。

りこ:はーーーいにょ!

斎:立ち直り早いなお前。

りこ:うにょっ!!!

ゆん:取りあえず、次は第3話…。




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